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岡口分限裁判

こんにちは!
司法書士法人石川和司事務所の町田と申します。
ブログ管理担当者には、会社法務方面の記事を依頼されたのですが、聞かなかった事にして私の書きたいテーマで行こうと思います。
各種法曹関係のサイトで2018年最も重大なニュースにも選ばれている「岡口分限裁判」です。(日産の事件よりも上位だったりします)
と言っても、さすが弁護士が強い興味を示すニュースだけあって、高名な法曹、学者の方々ががっつり検証されており、私ごときが何をいまさら感がありますので、平たい言葉で内容をさらっと撫でる程度に説明を試みるのと、最後に素朴な感想程度のものを述べてみたいと思います。
まず、「岡口さん」とは?
①東京高等裁判所の裁判官です。
②ツイッターなどのSNSで法律関係のニュースを高頻度でアップされていて、法曹関係の評判は上々だそうです。
③度々アップされる白ブリーフ一丁の半裸自撮り画像は業界では超有名です。
そんなお岡口さん、とあるツイートをしたところ、所属の東京高裁から「懲戒申立」を喰らってしまいます。
問題のツイートの内容がこちら(元のツイートは削除済みなので岡口さんのブログリンクです)
公園に放置されていた犬を保護し育てていたら,3か月くらい経って, もとの飼い主が名乗り出てきて、「返して下さい」
え?あなた?この犬を捨てたんでしょ? 3か月も放置しておきながら・・
裁判の結果は・・
これのどこが問題なのかというと、「え?あなた?この犬を捨てたんでしょ?・・・」の下りで、裁判当事者の一方を非難した、というのが東京高裁の主張です。
ちなみに、裁判官を戒告にするには、「分限裁判」という裁判によらなければいけないらしいんです。(裁判所が裁判官の裁きを求めて裁判所に訴える、という手続きです。)
今回の場合は、東京高裁が申立をして、最高裁が判断するという手続きになります。
裁判というからには、原告の主張があって、被告がそれに反論して、主張事実に食い違いがあったりして、お互いに証拠なんかを出し合って、最終的に裁判官が判断する、というものですよね。
なので、岡口さんも一生懸命反論します。主な論点は、
①「え?あなた?この犬を捨てたんでしょ? 3か月も放置しておきながら・・」のところは、岡口の意見表明ではなくて、リンク先にもあるとおり「もとの飼い主」の意見の要約ですよ。
②東京高裁の主張がすごくふわっとしてるけど、もう少し具体的にしてくれない?
③ツイートは、表現の自由で保護される行為だから、制限するならちゃんと事前に線引きするよね?
④改めて言うまでもないけど、過去の厳重注意を確定した悪行として判断材料にするのは、手続き的にあり得ないよね?それをやるんだったちゃんと争いの俎上に乗せるよね?
(岡口さんは、この事件の前にもツイートの内容で上司に怒られてるみたいです。)
とても淡泊な東京高裁の主張に対して、ボリューミーで説得力もあるように感じます。
さあ、東京高裁はどう反論するのかな?と、当時の私は思ってました。
最高裁「戒告」
いきなり決定です。とてもスピーディーです。
主な判示理由は、
①みんな、岡口さん=裁判官って知ったよね。
②普通の人は、「え?あなた?この犬を捨てたんでしょ? 3か月も放置しておきながら・・」は、岡口さん個人(=裁判官)の意見だと思うよね。(ばっさり)
③裁判官にも表現の自由はあるけど、今回の件は逸脱してるよね。(ばっさり)
④今までしょうもないツイートでたくさん怒られてたよね。岡口さんも謝ってたよね。
~補足~
岡口さん、あんた今まで散々怒られてたでしょ?これは「the last straw」(ラクダの背に限度いっぱいの荷が乗せられているときは、麦わら一本積み増しても、重みに耐えかねて背中が折れてしまうという話から、限界を超えさせるものの例え)なのだよ。
けっこう注目されてた裁判だったので、たくさんの専門家の方々がリアクションされてまして、私が知る限りではだいたいこんな感じです。
①事実認定おかしくね?
②東京高裁の主張に無いところを最高裁が攻めまくってるけど、手続き的にやばくね?
③表現の自由をばっさり切ってるけど、人権なめてんの?
と、だいたい事件の流れはこんな感じです。
蛇足ながら、私個人の感想を少しだけ。
前述のとおり、最高裁の決定とその理由が非難囂々されてまして、まあそれはそうなるよね、とは思うんですが、裁判所としては、本気で裁判をするつもりなんて毛頭なかったんだろうな、とも思うのです。
つまり、「分限裁判法」っていう法律があるから、その手続きには乗せるけど、実際は一方的な処分を下すっていうのがまずあって、それを粛々と遂行したのが今回の事件なんだろうと思います。これが民間の組織だったら何の違和感もありませんしね。
裁判官の独立とか、日本の法律には、裁判の公平を保つ理屈が色々書かれているんですが、法が求めている裁判所のあり方と、裁判所が求めている裁判所のあり方に、大きな隔たりがあるような気がします。
あと、the last strawの下り、ドヤ感がすごいけど、恥ずかしくないのかな
詳しく知りたい!という方はご本人がどこよりも詳細な経緯をブログで綴られていますので、そちらをご覧下さい。
司法書士法人石川和司事務所
町田昌範